映画『国宝』レビュー:芸と宿命を描く圧倒的映像美と演技力

目次

  1. 作品概要
  2. あらすじ
  3. 映像美と演出のこだわり
  4. キャストの圧巻の演技
  5. 観客の評価と反響
  6. 興行成績と社会的インパクト
  7. 総評

1. 作品概要

映画『国宝』は、吉田修一の同名小説を原作に、李相日監督が映像化した大作。脚本には奥寺佐渡子、撮影には『アデル、ブルーは熱い色』で知られるソフィアン・エル・ファニが参加し、国際的な映画水準にまで引き上げられた作品となっている。

主演には吉沢亮と横浜流星を迎え、芸の世界に生きる若者たちの運命と葛藤を描き出す。

2. あらすじ

任侠の家に生まれた少年・喜久雄(吉沢亮)は、歌舞伎の名門に引き取られ、過酷な稽古と舞台の世界に身を投じる

その才能は開花し、やがて“国宝”と称される存在へ。

しかし、その道程にはライバルであり同志でもある俊介(横浜流星)との対立や、芸と血筋の重圧が常に立ちはだかる。

芸にすべてを賭けた人間たちの、愛と嫉妬、誇りと執念が交錯する一代記だ。

3. 映像美と演出のこだわり

  • 舞台シーンでは観客の視点ではなく、役者の視線から描く演出が多用され、没入感は圧倒的。
  • 白粉を施した姿で舞う吉沢亮と横浜流星のシーンは、ただ美しいだけでなく、芸と運命の象徴として観る者を圧倒する。
  • 美術・衣装・所作に至るまで細部への徹底したこだわりがあり、歌舞伎に馴染みがなくてもその世界観に引き込まれる。

4. キャストの圧巻の演技

  • 吉沢亮(喜久雄):目線や表情だけで感情を語り、観客を深く魅了。まさに舞台上の“国宝”を体現。
  • 横浜流星(俊介):尊敬と嫉妬が入り混じる複雑な心理を繊細に演じ、ライバル関係に真実味を与える。
  • 田中泯(小野川万菊):限られた登場時間ながら、圧倒的な存在感で観客の記憶に刻まれる。

演技合戦そのものが、本作の最大の見どころだといえる。

5. 観客の評価と反響

多くの観客からは「3時間弱があっという間」「理屈ではなく映像に凄みがある」と絶賛の声が相次いだ。

特に「観ている最中にもう一度観たくなった」というレビューは、作品の吸引力を物語っている。

一方で、一部からは「詰め込みすぎで余白がない」との指摘もあり、濃厚な物語ゆえの好みの分かれも見られる。

6. 興行成績と社会的インパクト

伝統芸能を題材にしながらも、口コミで評価が拡大し、興行収入は21億円を突破。

公開3週目で首位を獲得するなど、社会現象的なヒットを記録した。

「歌舞伎を知らなくても楽しめる」という口コミが広がったことで、若い層からも注目を集めた点は特筆すべきだ。

7. 総評

『国宝』は、芸に人生を捧げた人々の美しさと狂気を、映像と演技の力で描き切った大作である。

歌舞伎に馴染みがなくてもその熱量に圧倒され、観終わったあとには強い余韻が残る。

単なる芸術映画ではなく、「人間ドラマ」としても完成度の高い一本。

2025年を代表する邦画のひとつになることは間違いない。

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